日経の産業部が重視する最大の取材テーマ


日本で最も影響力のある経済メディアといえば、まぎれもなく「日本経済新聞」です。その日経の中で、企業の広報部門の担当者が特にケアしなければならないのは産業部の記者ではないでしょうか。産業部は編集局の中で120名の記者を抱える編集局内で最も大きな部署で、金属、エネルギー、電機、通信など業界ごとに14のチームを編成しています。それぞれのチームにはデスク(複数のチームを兼務する場合あり)とキャップがおり、例えば金属では二人の記者が、通信には4人の記者がおり、記者クラブなどを拠点に取材活動を行っています。大所帯だけに日経の本紙でも1面、3面(総合)、11面(企業総合)、12面(企業1)、13面(企業2)と合計5つの面の出稿を担当し、夕刊や日経産業新聞がこれに加わります。経済関係の記事を執筆する部署として他にも金融経済部、証券部、消費産業部などがありますが、出稿責任が他の部署よりも重いことが伺えます。

産業部の部長を務めた方に伺ったところによれば、重視する最大の取材テーマは「統合・再編」ということでした。確かに日経が放つスクープにはこうしたテーマのものが少なくありません。かつて交流のあった産業部記者は「市場にインパクトを与えることが最大の使命」だと話してくれたことがあり、「M&Aと社長人事の場合、他紙との”同着”は負けに等しい」のだそうです。別の記者は「自分の書いた記事が”バイテイ”となって初めて一人前だ」と言っていました。”バイテイ”とは聞きなれない言葉ですが、「売買停止」の略で、株式市場において株価に大きな影響を与えるニュースが出た場合、東証が一時的に対象銘柄の売買を中止させる措置のことです。いかにも日経の記者らしいスクープにかける意気込みとプライドを感じます。

10年以上前に、自分が広報担当として扱った海外企業との提携案件がスクープされずに首尾よく一斉発表に持ち込んだケースがありました。普段は明るくさわやかな産業部の担当記者に記者会見を行う旨の連絡をした時の電話越しに伝わってくる落胆した様子、そして記者会見での茫然自失とした表情を見て、「それほどモノにしたかったのか」と複雑な思いに駆られました。

「適時開示情報閲覧サービス」には時折、「本日の一部報道について」と題した上場企業のリリースが掲載され、「当社が発表したものではなく、そのような決定事実はない。開示すべき事項が発生した場合には速やかに開示する」との画一的な内容のコメントが発表されます。実際に調べたわけではありませんが、その「一部報道」のほとんどがその日の日経の記事を指しているといっても過言ではないでしょう。しかも多くの場合、ほどなくして正式な発表がなされ、その報道が結果として正しかったことが証明されることになるようです。日経のスクープ記事を探すには「適時開示情報閲覧サービス」から「本日の一部報道」を探すのが意外と近道だったりします。  (T)

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