都合の悪い記事と誤報の違い


マスコミが事実と異なる内容を報じた場合、報じられた当事者に有形無形のダメージを招くことがあります。新明解国語辞典によれば「伝えるべき事柄を正しく伝えていない知らせや報道」のことを誤報といいます。数か月前には某市長の発言に関して、報道機関との間で「誤報」に関する認識の違いが大きな話題になりました。

当然のことながら、広報担当者の立場としては何としてもこうした事態は避けなければなりません。私自身の経験に照らしてみると、こちら側の一方的な理屈で記事を「誤報だ」と断じることに違和感を持っているので、そうした事態に陥ったことはありません。ただ、記者がインタビューなどでつかんだネタについて、憶測を含んだ記事を書かれたことや数字やニュアンスの取り違いといったことは何度か経験しました。これらは、こちら側にとっての「意図しない記事」や「都合の悪い記事」ではあっても、話したことや事実と大きくかけ離れていたことはありませんでしたので、いわゆる誤報とは違うと思っています。

かなり前のことですが、経営トップと某工業新聞の記者とのインタビューの席上、不振が続いていたため、再構築の途上にあった、ある事業について話題になりました。記者からの「今後の戦略についてどのようにお考えですか?」との問いに、トップは「他社との事業提携を含め、あらゆる可能性を検討している」と答えました。すると数日後の紙面で「●●事業、見直しへ」と1面大見出しで書かれてしまいました。幸い、「見直し」の内容が具体性に乏しかったため、大きな混乱にはなりませんでした。ただ、他社との提携交渉が密かに進行中であったのは事実で、そのさなかに記事になってしまったので、大いに肝を冷やしました。

上記のようなケースはなかなか防ぎようがありません。誤報ではありませんから、記者に対しても、「大きな記事になってびっくりしています」といった腰が引けた事しか言えません。最近、とある大手新聞社の方が「記者は、経営者の視点と消費者(読者)の視点を持たなければならない。どちらに力点を置くかによって記事の中身は変わってくる」と言っていました。今にして思うと読者の視点に立てば、こうした記事が出ることも想定して置かなければならなかったと感じています。

対処法は「微妙なタイミングでの取材設営は控える」ことぐらいでしょうか。ただ、記者からの取材要望にも関わらず、取材設営をいたずらに先延ばしすることは相手の不信感を生みますし、「何かある」と思わせる事にもつながります。さらに、夜討ち朝駆けのように別の取材手段に訴えることもあり得ます。

では、微妙なタイミングと知りつつ、取材を受けざるを得ない場合はどうすればいいでしょうか。これには「書かれることを覚悟する」しかありません。冗談のようですが、それだけの覚悟を持って応対していただく必要があることを取材応対者はもとより関係者に伝えなければならないでしょう。取材を受けて薄氷を踏むか、取材を受けるのを控えて不確かな記事が出るのを待つのか、ケースバイケースの判断が求められるところです。 (T)

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