勝負の分かれ目


ちょっと前になりますが、日帰りで青森県に出張する機会がありました。この地で初めて「東奥日報」を手に取りました。日本ABC協会「新聞発行社レポート 普及率」(2012年7月~12月平均)によれば、青森県で最も読まれている新聞の第一位が「東奥日報」(販売部数24.8万部 以下同)、第二位が「デーリー東北」(17.1万部)、第三位が大きく離れて「読売新聞」(2.7万部)となっています。「東奥日報」の世帯普及率は約43%に達し、「デーリー東北」を加えると県内のおよそ6割の世帯がどちらかの新聞を読んでいる計算になります。

「東奥日報」や「デーリー東北」のような地方紙は全国紙と違い、取材にかけられるマンパワーに限界があります。このため、共同通信や時事通信といった通信社と契約をして、送られてくる配信記事を報道部や整理部のデスクが取捨選択を行い、紙面を組んでいきます。

戦前は同盟通信社という同じ会社だった共同通信と時事通信ですが、現在ではライバルとして、しのぎを削っています。ただ、どちらの配信記事を使うかと言えば、多くの地方紙のファーストチョイスは共同のようです。理由はよくわかりませんが、共同は加盟社(地方紙を含めた国内の主な新聞社、テレビ局、ラジオ局が加盟)の出資によって成り立っている社団法人であることと関係があるのかもしれません。

一方の時事は共同と同じように一般ニュースもカバーしますが、個別企業の動向を含めた経済ニュースや行政情報に強みがあるほか、「Yahoo!ニュース」への記事提供を国内の通信社としては唯一行うなど、共同とは違った存在感を見せています。

一見地味な存在の時事ですが、経済報道に強みを持つ報道機関であることを再認識させてくれる「勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語」(下山進著)という本があります。発売が1999年11月ということで、自分が企業の広報担当者として悪戦苦闘していた時期と重なります。当時の上司から「面白いから読んでみたら」と勧められて以来、今でも読み返すことがあります。時事、外資系通信社そして日本経済新聞社による金融情報端末を巡る攻防や東京三菱銀行の合併スクープの内幕などが描かれたノンフィクションです。広報やジャーナリズムに関心がある方にお勧めしたい一冊です。ちなみに著者の下山氏は作家ではなく、現在でも出版社に勤務されているそうです。   (T)

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