Reputation ManagementとPRの報酬 ~あの頃の「未来」だった今~


1980年代にPR業界に入った頃、PRの報酬は、基本的に費やした時間に対する対価であった。クライエントの代理として動き、クライエントに実働時間の対価に勝る価値をもたらした。当時PRがプロパガンダと思われがちな点もあり、企業に対する社会からの評価(Reputation)を高めることを目指すPRを我々はReputation Managementと呼び始めた。広報=メディア・リレーションと狭義に捉えられがちな当時、クライエントに対し、この言葉で活動を提案するたびに、その言葉の訴求力の強さを実感した。

マスコミが「株主の権利」について日本で初めて大々的に報じ始めた際も、国内企業の株式買収と株主総会への出席に絡む、ある事例の渦中にいた。今から思えばあの頃からこつこつとIRについて体系立った方法論を蓄積していれば、ひょっとして今頃はIRコンサルタントとして身を立てていたかもしれない。当時は株主に対する情報開示の一環で米国系のクライエントがForm 10-Q(四半期報告書)およびForm 10-K(年次報告書)を日本の機関投資家、個人投資家向けに翻訳して配布しており、四半期ごとにそれを作成するのが私の定例業務の一つでもあった。

メディアとPR代理店との関係について私は、記者が自らでは把握しきれない膨大な価値ある情報を彼らに伝播する媒介としての役割と認識していた。記者の皆さんに貴重な「きっかけ」を差し上げること、大事なことに気付いていただけるよう手助けすることが使命だと心得ていた。あれから20年、ワープロ、続いてPCが私たち、そして記者の皆さんの仕事のスタイルを変え、インターネットを通じ、個人でアクセスできる情報の量が飛躍的に増大した今でも、それは変わらない。

Webという強力な情報発信ツールを通じても伝えきれない、しかも貴重な情報アセットを企業は豊富に持っており、それを仲介するPRパーソンの使命は今でも変わらない。メディアとの信頼関係は今でもそれをベースに育まれる。もちろん、情報伝達の速度は20年前とは比較にならないほど早まり、PRパーソンのReputation Managementの迅速な対応とバランス感覚が企業の存亡を左右すると言っても過言ではない。

企業のReputationを左右する、広報代理店業務、そのサービスに対する報酬が「成功報酬」ということは20年前には思いもつかないことであった。1980年代、PRに「成功報酬」はなじまない考え方だった。今も変わらないが、われわれがメディアや消費者等、ステーク・ホルダーと対峙するときは、クライエントの代理人として常に真剣勝負で対応しているからである。時に、マーケティング、商品・製品PRの分野で成果の予想し難いアプローチをする場合に、確約できる具体的な成果をクライエントから事前に求められることがある。そんなところに「成功報酬」が入り込んでくる隙がある。広報代理店にとってそれは好都合だが、「逃げ」であり、成果が出なかった時のための「予防線」となり、さらには「保身」につながっていく。「創造性」や「チャレンジ」からも遠ざかる。

クライエントに代わり、あるいはクライエントと共に情報提供のためメディアや他のステーク・ホルダーにコンタクトをし始めた時、貴重な代理人としてReputation Managementの一翼を担った、Best Effortレベルではあるが最高の効率を意識した活動が始まる。その活動、そのプロセスにPRの価値があることを再認識したい。

(M)

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