蚊帳とCSR


日本ではほとんど見かけることがなくなった蚊帳だが「オリセット®ネット」という名でアフリカを中心に爆発的に普及していることをご存知だろうか。

この「オリセット®ネット」は、WHO(世界保健機関)から「長期残効型防虫蚊帳」として使用を推奨され、米週刊誌『TIME』で「Most Coolest Inventions of 2004」に選定、マイクロソフトのビル・ゲイツや女優のシャロン・ストーンが熱心に購入を呼びかけるという優れモノだ。

マラリアは蚊を媒介にした感染症だが、今でも年間5億人が発症、抵抗力の弱い幼い子供を中心に年間100万人が命を落とすといわれ、そのほとんどは、アフリカのサハラ砂漠以南の地域で発生している。この恐ろしい伝染病マラリアの撲滅に日本の化学メーカーが開発した蚊帳「オリセット®ネット」が大きな役割を果たしている。

一般の蚊帳と大きく違う点は2つ。1つは蚊が嫌がる成分を特殊な技術によって樹脂に練りこみ、その成分が徐々ににじみ出ること。このため、洗濯をしても殺虫効果が5年以上失われないという。そしてもう1つは網の目が4ミリ幅と通常の倍もあること。アフリカという酷暑の地にあって、通気性を最大限確保しつつ、蚊が侵入しないギリギリの幅を検討した結果だそうだ。実物を手に取ると、鮮やかなスカイブルーの色調と相俟って、蚊帳というよりおしゃれ(?)な魚網のようでもある。

この会社ではタンザニアの現地企業に技術を無償で供与しているほか、その現地企業と合弁企業も立ち上げているが、これら2ヵ所の工場で3,200人以上の雇用創出につながっている。この工場には有名人の来訪も少なくなく、これまで元サッカー選手の中田英寿氏、英ロックバンドU2のボーカリストのボノ、そしてブッシュ前米大統領夫妻までもが視察に訪れた。昨年2月にブッシュ夫妻が訪れた時の様子はBBCなど世界各国のメディアを通じて報道されたほか、ホワイトハウスのホームページでも見ることができる。(※現在はリンク切れ)

現在、中国とベトナムで生産される分も合わせると、年間3,000万張りが生産され、1セット5ドルで国際的な援助機関やNGOを通じて必要とされる地域に届けられている。今後、ナイジェリアにも同様の生産拠点をつくる計画で5,000人が新たに雇用される予定だという。

今やCSR(Corporate Social Responsibility)は企業の持続的発展において”蚊帳の外”を決め込むわけにはいかない取り組みだ。ただ、同社のように単に社会貢献にとどまらずに、事業として成立し、その継続のための適正利潤を得るというモデルはまだまだ少ない。その意味でCSRというものが本来あるべき姿というものを示しているのではないかと思う。

(T)

BBC NEWS:

http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/africa/7250321.stm 

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