極端な性的異常者を描いた映画に日本人はどのような反応をするか?

法律や規則は国が(カナダ・米国の場合は州も)どれほどリベラルか保守的であるかを示してくれる。映画もまた、社会のリベラル度や保守性を測る物差しとなりえる。
映画「ルーム」(部屋)を例にとってみよう。

この作品は衝撃的な事件に基づいている。読者はジョセフ・フリツルというオーストリアの男を思い出せるだろうか。ドイツの週刊ニュース誌・シュピーゲルが、2008年5月になっても伝えているところによると、この男は実の娘、エリザベスを1984年から1993年まで自宅の地下室に監禁し、性的虐待を続けて7人の子供を産ませた。

この実話を基にアイルランド・カナダの作家、エマ・ドノーは同名の小説を書き、2010年にベストセラーになった。

どれだけの数の日本人作家が、このような困難なテーマを好んで小説に仕立て上げられるだろうか。日本では、この信じられない性的虐待者は例外的な存在とみなされ、忘れられたように思える。

ドノーは自作を基に脚本を書いた。製作はアイルランドとカナダ両国の映画人である。監督は比較的無名のアイルランド人、レニー・エイブラハムソン。彼は10頁に及ぶ売り込みの手紙を原作者に書いてこの仕事を得た、という。エリザベスを基にしたマーを演じる主演はブライエ・ラーソン。もう一人の主役、ジャックは子役のジェイコブ・トレウレイが演じた。

ニューヨーク・タイムズ紙(NYT, 10月9日)はこう伝えている。「有名俳優を使い、オスカー賞受賞を狙う作品が、9月にいつものようにトロント映画祭で競い合った。トロント映画祭で名誉ある観客賞を獲得した作品は、過去8作のうち6作がオスカー最優秀作品賞の候補となり、そのうち3作がオスカーの栄誉を最終的に勝ち得ているからだ。ところが、大きな驚きが起きた。観客賞は1,300万ドル(わずか約15億円)の製作費で作られ、少数の人にしか注目されなかった“ルーム”に決まったのだ」

この作品を「トロントと(アメリカ・コロラド州の)テラライドの両映画祭で観た人々は、総立ちになり涙をこぼしながら拍手を送った」とNYTは伝えている。

「ルーム」の上映はアメリカでは10月に始まったが、他国では2016年1月からとなる。日本で上映されるかどうかは、まだ不明だ。おそらく上映となろう。そう想定しても、どんな映画評が現れるか、また一般の日本人観客がどんな反応を示すか、予測は困難である。なにしろ、このカナダ・アイルランド合作の作品は、極端な性的異常者の信じられないような行動を基にしているからだ。

潮昭太(東京在住フリーランス記者)

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